子どもが転んでも手が出ない、立っていられないなど背筋力の低下が問題となり、1978年『警告子どもの身体は触まれている』がTVで放映されました。以来30年、その間のメディアの進歩、普及は著しく、メディアにドップリ浸かる子どもたちの体力の低下が深刻になってきました。
発達を無視した早期教育や、競争を強いられる中で子どもたちの心身は大きなストレスを常にかかえています。また、子どもたちが巻きこまれている痛ましい事件の報道も後を絶ちません。
大人社会にあっては、規制緩和政策によって、競争社会にいっそう拍車がかかり格差社会やワーキングプアが生み出されています。そのような状況の中で、大人たちは子どもに向かうゆとりさえ奪われてしまっています。
どんなに世の中が変わっても、人間らしく生きていく力の土台をつくる乳幼児期は、身近な人に愛され、水や砂や土と遊び、風までも食べての散歩等、実体験で五感をしっかり使い、その年齢を生ききらせることが大切です。そのことが人を愛し、考える力を培うからです。
また、吟味された食事を摂り、早起き・早寝の生活リズムを整えることは子ども自らが持っている発達しようとする力を支えます。子育ちのしにくい世の中であれば尚のこと、大人たちの共同・協力の力を集めて、子どもたちが健全に育つ環境づくりをしてゆかなければと思います。
カレンダーの絵は、どの絵も、父母、保育士、周りの大人たちが子どもを真ん中に力を合わせて、子どもの内に秘めた力が花開くようにと願い、環境づくりに力を合わせている園の子どもたちが描いた絵です。特に行政から財政的な支援の無い未認可園での大人たちの努力には並々ならぬものがあります。
子ども時代を目一杯に謳歌させ、“子育ちに科学とロマンを求めて”子育ての楽しさを保育カレンダーを通して多くの方々にお届けしたいと思います。
ご相談ごとがありましたら最寄の園にどうぞお問い合わせください。
雑巾がけ
タッタッタッタッタッ……と軽やかな足音がホールに響きわたる。年長組の一日は雑巾がけから始まる。
年長になると雑巾がけは毎日の仕事である。夏の暑い日も、冬の寒い日も、ホールやテラス、子どもたちの生活の場を端から端まで、ていねいに拭く。両腕をすっと伸ばし、手指は開き、手のひら全体でつかむ。そして身体の要となる足腰で床をしっかり蹴り、長いテラスを一気に拭ききる。
その顔は誇らしく、そのスピードと姿は小さな年齢の子どもたちのあこがれとして、心に根づく。
使い込んで、手の形に穴のあいた雑巾は、仕事への誇りの証でもある。
初めての雑巾縫いは、針に糸を通すことから始まる。なかなか通らず失敗しながら、何度も糸と針穴に神経を集中させる。「とおった!」と歓声があがる。
友だちができることを知り、あきらめずに頑張る。玉結びをして縫い始める。
ひと針 ひと針、真剣な眼差しで縫っていく。
毎日やりつづける仕事は、集中力や持続力を育てることにつながる。
やり終え、汗びっしょりの顔には、達成感や充実感がみなぎっている。
自分一人だけ頑張るのではなく、みんなの中だからやりきれる。
雑巾がけは、『喜びや誇りを感じながらの育ち合い』である。
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発行:保育カレンダー編集委員会
宮城県登米郡迫町佐沼字錦132-2(錦保育園内)TEL0220-22-2647 FAX0220-22-8757
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