2020年 表紙

 子どもの育ちにとっての“外あそび”の大切さが改めて見直されてきています。そしてそれは、豊かな自然環境と平和な社会の中でこそ実現できるのです。
 ところが、2011年の東日本大震災から8年が経ち、東京電力福島第一原発事故を知らない世代も増えてきているなか、被災地では未だに外あそびの制限や子どもたちの健康問題を含め、今でも課題が山積していることを私たちは決して忘れてはいけません。
 安心して外あそびができる豊かな自然環境をどう守っていくのか。今、大きな問題としてプラスチック等による海洋汚染問題に代表されるように、地球規模の環境破壊が進み、様々な生物の生存が脅かされています。このままでは生態系全体に大きな影響を及ぼしかねません。私たち大人が子どもたちにどんな未来を残すのか、考える「時」がきていると思います。
 子どもたちの絵からは、自然の中での豊かな体験を通して仲間と育ち合っている喜びや楽しさが伝わってきます。私たち保育カレンダー編集委員会は、一人ひとりの幸せな子ども時代を守っていくために、これからもこの保育カレンダーを制作していきます。ぜひ普及にご協力をお願いします。
▲6歳6ヵ月の女の子(5年保育)

もとみや幼児の家保育園
(福島県本宮市仁井田字桝形42−60 TEL 0243−34−3640 園長 渡辺 洋子)
 東北の玄関口、福島県のほぼ中央に位置し「福島のへそのまち」と言われている本宮市に、地域住民が拠出する資金を基金に52年前に開園し、2002年に認可保育園となった定員39人の保育園です。当園は団地の中にあり、少し足を延ばせば畑や田んぼがある自然豊かな所で、子どもたちは地域の人に見守られながら生活しています。
 8年前、東日本大震災による原発事故が起き、50キロ圏内に入るこの地域は一瞬にして放射能汚染の恐怖にさらされ、保育園も休園せざるを得ない状況になりました。約1ヵ月の休園を経て保育は再開されましたが、放射線量の高さゆえ戸外活動に1日30分までという制限があり、室内での生活を強いられました。閉ざされた空間では、インフルエンザや溶連菌など、あらゆる感染症が流行りました。いったい、これからどうやって子どもを育てていけば良いのだろうと不安に思っていた時、全国保育実践交流連絡会の東北の保育士たちと出会いました。室内でも思いっきり体を動かせるリズムあそびを毎日取り入れることで、子どもたちは心地よく生活できるようになりました。
 原発事故から3年が経った頃、戸外活動の制限も減り、散歩にも出掛けられるようになりました。しかし、子どもたちが大好きな散歩コースの田んぼには、今でも汚染土壌を保管している仮置き場があり、放射線量が高めの場所もあるので近付かないように散歩をしています。
 この子は、1歳半で姉と一緒に入園してきました。集団生活の中で泣いたり笑ったり、仲間とのぶつかり合いを通して、自分の思いをよりはっきり出せるようになっていきました。年長になり大名倉山や安達太良登山、年6回の福島年長交流合宿で初めて出会う友だちと関わる中で刺激を受け、跳び箱や雑巾縫いなどの年長活動にも積極的に取り組む姿がありました。穴があくまで雑巾がけをし、鯉のぼり制作では10人の仲間と相談しながら作り上げていく難しさと喜び、そして達成感を味わいました。
 今年度は、さくら・さくらんぼ保育を長く実践してきた2人の保育士の協力を得て、リズムあそびや保育内容の見直しを行ってきました。リズムあそびが大好きになり、自由に体が動く心地よさを体験すると共に「すごいねー」「みんなにお手本見せて」と励まされて自信がつき、意欲的に生活するようになりました。
この絵は、初めて仲間と見た『森は生きている』の劇の感動を表現したものです。

発行:保育カレンダー編集委員会
愛知県豊川市市田町原山97・98(恵の実保育園内)
TEL 0533-65-9803 FAX 0533-84-9777
ホームページ http://www.hoiku-c.net/

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定価1200円

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